絵・画作者:雅月さま
website【眼鏡屋敷】
喧しい宴の席も、ついに慶次が登場すると、しーんと水を打ったように静まりかえった。
あまりの荘厳な美しさに、皆、圧倒され、声を発することができなかったからである。
一頭の大柄な唐獅子がひらひらと舞う蝶を追いかける姿を、黒繻子の布地一面に金の糸で刺繍した、大胆な図案の狩衣を着、それに合わせて黒繻子の袴を身につけていた。豊かな黒髪は結われずそのまま背中に流され、頭上には鳳凰を模した冠を頂いている。その鳳凰の長く伸びた金色と深緑色の尾羽が、髪を覆うように降りかかり、黒髪の美しさをいっそう際立たせていた。
客席に座る者たちは、その慶次の壮麗な姿に衝撃を受けた。天の世界から舞い降りた天空神の如く、人間を超えた神々しい美しさを放っていたのである。
〜『遠い残照』十二章より抜粋〜
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