夕昏の客3
小太郎は目の前で震えている慶次を面白そうに見下ろし、その腰を自分の股間にぐいっと引き寄せた。
隆起していた小太郎の先端が肛口に触れ、恐怖で戦いていた慶次の顔がさらに強張った。
「小太郎っ、止めてくれ! 入らない! 無理だ」
拒絶する慶次の声は耳に入っていたが、小太郎は止めるつもりはなかった。本当に嫌ならば、本気で我の身体を押し返せばいい・・・そう思っている。それに本音を言えば、慶次の肌の匂いを嗅いだときから、どうしようもなく興奮してしまっている。この滾る欲望を押し殺すのは、容易ではなかった。
「嫌なら本気で抗えと、我は言ったはずだ」
膝と腕で慶次の身体をがっちりと押さえ込んだまま、小太郎は挑発するように慶次を見た。
慶次はその視線をじっと見返すと、束縛から逃れようと精一杯身体をよじった。が、それで小太郎の腕から逃れられるはずはなかった。
(おそらく小太郎と俺の力はほぼ互角・・・)
上から押さえつけられたこの体勢では、圧倒的に不利だ。
そうしている間にも小太郎は、肛門にあてがった肉杭を容赦なく突き入れようとしてきた。今までに何度も孫市を受け入れ、以前より男を受け入れることに慣れてはいたが、小太郎のものはあまりにも大きすぎた。ましてや、前戯もせずにいきなりねじ込まれたのだ。
酷い激痛に、慶次は身体を竦ませ、ヒッ、と悲鳴を上げた。
「駄目だっ、裂けちまうっ!」
慶次は無我夢中でもがきながら、必死に訴えた。
だが小太郎は、慶次の声を無視して何度も突き入れようとする。その度に、痛みと恐怖で筋肉が強張り余計に肛門が締まってますます入らなくなるのだが、今まで同衾したことがない小太郎はそれが分からなかった。
何度も身体を繋げようとしたのち、亀頭すら入れられないことが分かった小太郎は、不満げな表情で慶次を見た。なぜ入れられないのか、という疑問が顔中に浮かんでいる。
「うぬはあの雑賀の頭領を受け入れている・・・そうではないのか?」
言われて慶次は、カッと顔が火照ったのが分かった。
わざわざ返事をせずとも、肯定しているも同然だった。
「あんたのは、でかすぎるんだ・・・」
慶次はますます顔を赤くした。
「・・・それに、いくら俺に経験があるからと言って、そこを解しもせず、いきなり入れるのは無理だ」
「解す? 解すとは、何だ?」
まじまじと慶次を見つめながら、小太郎は訊いてきた。本当に意味が分からないようで、珍しく真剣な表情になっている。
(小太郎はもしかして、性的なことに疎いのか?)
慶次は正直とても驚いた。とりたてて小太郎が好色な男だとは思っていないが、人並みくらいには性欲もあり、当然そちらの経験も少なくはないだろう、と想像していたからだ。しかし目の前の小太郎は、経験すらあるのかと疑わしくなるほど何も知らないように見えた。
「解すっていうのは、挿入しやすくするために肛門を締めている筋肉を緩ませることさ。そこは女人のものと違って濡れてもいねえし、もともとモノを受け入れるようにはできていねえから、すんなりと入るものじゃねえんだ」
いちいち説明するのは恥ずかしかったが、慶次はごく真面目に答えた。「そんなことも知らないのか」と言ってからかい、うやむやにしてしまうこともできただろうが、小太郎の真剣な顔を見るとやはり躊躇われた。
「そうか・・・」
呟くように言った小太郎は、いまだ顔を赤くしている慶次にじっと視線を注いでから、いっそう強く腰を掴んだかと思うと、高々と尻を上に持ち上げた。
「やめろ、小太郎っ!」
慶次は抗議の声を上げたが、小太郎はそんな声など耳に届いていないかのように、尻の窪みをまじまじと見つめている。食い入るような視線で恥部を見られ、慶次は顔から火が出るほど恥ずかしくなった。
「そんなところ、恥ずかしいから見ないでくれ」
小太郎の腕から逃れようと、慶次は腰を左右にくねらせ、脚で小太郎の身体を押しやろうとしたが、その行為は小太郎の興奮をますます煽っただけであった。
「クク・・・嫌ならば、もっと抵抗をすればよい。我の腕から逃れられぬ限り、我はうぬとの行為を止めぬ」
小太郎は面白そうに慶次を見下ろしながら、腕にぎっきりと抱え込んでいる豊満な臀部と太ももを舌で舐めあげた。
「ああっ・・・」
その瞬間、慶次は小さく呻き声を上げ、ぶるりと身体を震わせた。ほぼ毎夜、孫市に抱かれているその身体は、少しの刺激にも反応してしまうほど弱くなっている。濡れた舌で舐めあげられたらひとたまりもない。意志とは関係なく、慶次の身体に官能の炎が灯りはじめて、抵抗らしい抵抗などできなくなるのだ。
「よい声で啼く」
小太郎は満足げにつぶやいた。
尚も、何度か慶次の白い肌に舌を這わせた小太郎は、やがて奥の蕾が見えるほど上げさせた尻の肉を掴み、ぐいっと割れ目を押し広げた。慶次が暴れられないよう、両脇でがっしりと脚を挟み込んでいる。そのままの体勢で背をまるめ、尻の最奥にある薄桃色の蕾に顔を近づけた。
慶次は全く気づいていないが、そこはまるで男を誘うように艶めかしい色香を放っていた。
「悩ましい。・・・クク、興をそそる眺めだ」
小太郎は何の躊躇いもなく、その薄桃色の肛門を舌先で舐めた。具体的な解し方など分からなかったが、本能が赴くまま、中に舌を差し入れるようにして舐めた。
「はぁぁ・・・・っ」
舐められるたびに、慶次は激しい反応を見せ、背を逸らせて何度も身体を震わせた。その姿が、なんとも可愛らしい。自分の愛撫に素直に反応する慶次を見て、慶次を愛しいと思う感情はますます強くなった。それに舌先で肛門を舐める際、慶次の二つの睾丸が己の鼻梁にあたるのも、なんとなく可笑しく、心地よかった。慶次と深く関わっているのだ、という実感が湧いてくる。
しかし愛撫しているうちに、これで肛門が解せるのだろうか、と小太郎はしだいに気になり始めた。
「雑賀の頭領も、こうしてうぬのここを解すのか?」
決して孫市に張り合おうとして、こう言ったわけではない。純粋に疑問に思っただけだ。
小太郎は慶次を愛しいと思っているが、孫市から慶次を奪おうなどと微塵も思ってはいない。今まで誰にも縛られることなく生きてきた小太郎には、そもそも慶次を己のものにしようなどという考えはない。
慶次が愛しいから、惹かれる。抱きたいと思う。だから抱く、それだけだ。
たとえ慶次が誰のものであっても、誰を好きであっても、関係ない。もともと執着心の薄い小太郎にとっては、そこはあまり問題ではないのだった。
(ただし、慶次が本気で拒絶しない限り、今後も我は慶次に交媾を迫るつもりではあるが・・・)
慶次の端正な顔を見下ろしながら、小太郎は思った。
「馬鹿っ・・・なんてこと訊くんだい」
とんでもない質問をされた上、まじまじと小太郎に見つめられた慶次は、思わず顔を逸らせた。
「こういうことは、訊いてはいけぬものなのか?」
「いけねえってわけじゃねえが・・・」
言葉に詰まり、慶次は困惑気味に答えた。
「ではなぜ、うぬは質問に答えぬ。なぜそう顔を背ける」
相変わらずまっすぐに見下ろしている小太郎の視線を、慶次は顔を逸らせたまま、目だけで受け止めた。視界に蒼白い小太郎の顔が入ってきた。その顔には、心底不思議そうな表情が浮かんでいた。
その顔を見て、慶次は思わず笑ってしまった。
小太郎は己をからかうつもりでも、ましてや孫市に嫉妬しているわけではないことがよく分かったからである。小太郎はただ疑問に思ったから訊いた、それだけなのだ。
(小太郎は言葉の駆け引きなど考えもしない、純粋な男だ)
それに気づいた慶次は、なんとなく嬉しい気持ちになった。ますます小太郎が好ましい男に思えてくる。
「なぜうぬは笑う? 我には一瞬にして移ろううぬの感情がよく掴めぬ」
小太郎は怪訝な顔で言って、首を傾げた。
「悪い悪い・・・俺はてっきり、あんたが俺を言葉で弄んで、からかうつもりなのかと思ったんだ」
「言葉でうぬを弄ぶなど、我にはできぬ」
憮然と言った小太郎に、すまない、と慶次は謝った。そして、まっすぐに小太郎を見た。
「・・・孫市も、そうやってよくそこを愛撫してくれる」
羞恥心を感じながらも、慶次は小さな声で言った。
「では、舌でここを解せるということか・・・」
呟いた小太郎は、唾液で濡れ光っている肛門に再び舌を押し当てた。湿った暖かいものがあたるのを感じて、慶次はぴくりと身体を震わせた。快感で震えたのか、小太郎との同衾への期待で震えたのか、慶次にも分からなかった。
ただ抵抗しようという気持ちが、さっきより薄れてしまったことは確かだった。否、もともと本気で抵抗しようと思っていたのかすら、今になっては怪しいと思う。小太郎のものを受け入れる恐怖はあるが、小太郎と肌を合わせること自体は最初から嫌ではなかった。
小太郎は息を弾ませながら、貪るように慶次の蕾を愛撫した。いつの間にか、慶次がほとんど抵抗しなくなったことに気づき、拘束していた腕を僅かに緩めた。手のひらを慶次の太ももや腰に這わせて、その肌の感触を愉しむ余裕ができて、肌を合わせるという行為がこれほど心地よいものであったのか、と小太郎はようやく気づき始めた。
「うぬの肉体は、なぜこうも我の心を惹きつける・・・」
ぴんと張った滑らかな肌の感触、白く輝く肌の色つや、体温とともに立ち上る微かな体臭・・・どれもこれも小太郎には好ましく、愛しいものであった。何度触っても、何度見ても、際限なく欲しくなる。
唾液でべたべたになるほど舌と唇を這わせ、肛門を愛撫しつづけているうちに、肛門を締めていた筋肉が小太郎にもはっきりと分かるほど緩んできた。舌を中に差し入れられるほど、拡がっている。
爪で傷つけないよう、そっと指を差し込むと、慶次のそこは難なくそれを受け入れた。
「あぁぁぁ・・・・いい・・・っ」
長く量感のあるものを奥まで差し入れられて、慶次はたまらず呻き声を上げた。背を弓なりに反らせ、何度も首を振った。内部を満たされた快感に、慶次の意志とは関係なく、慶次の男の部分も次第に勃ちあがりはじめた。
そこが力強く勃起してくるにつれて、濡れた粘膜で指を包んでいた内壁が、キュッと締まって来るのを小太郎は感じた。指が抜けなくなるほど締めつけているそこは、指先を愛撫するかのように小刻みに震えた。
「ああ・・・・」
小太郎は無意識にため息混じりの息を吐いた。身体がじんと熱くなるほどの快感だった。
どうしようもなく興奮し、そそり勃っていた小太郎の陰茎が、どくんと脈を打った。差し入れた指で、これほどの快楽を感じるならば、ここに陰茎を入れたらどれほど素晴らしいだろう、と想像してたまらない気持ちになった。
小太郎は差し入れていた指を抜き、己の男根を握ると、亀頭を慶次の肛門にあてがった。それだけで達してしまいそうになるほど、興奮していた。
亀頭をあてがわれ、恐怖で顔をひきつらせた慶次が、
「まだ早い、もう少し指で慣らしてくれ!」
と叫んでいたのは聞こえたが、衝動を止められなかった。
堅く怒張したそれを中にねじ込むように、小太郎は腰を突いた。
「ひぃっ・・・駄目だ、小太郎!」
瞬間、慶次が苦痛の悲鳴を上げた。その悲鳴はさらに小太郎の興奮を煽り、慶次を気遣ってやる余裕を失わせた。想像以上に慶次の蕾は堅く、小太郎の進入を拒んでいたが、再三の攻めに降参したかのように、徐々に小太郎の亀頭を飲みこんでいった。
「ああっ・・・・痛い・・・裂けちまう・・・駄目だ」
慶次は顔を歪ませて、何度も何度も声を上げた。亀頭がめり込んで行くたびに、小太郎の背に廻された指がその痛みを訴えるのように背に突き刺さる。思わず、仰け反ってしまうほど痛かったが、小太郎は進入を止めなかった。
額に冷や汗をにじませ、はぁはぁと息を荒げている慶次をじっと見つめ、なだめるように髪を撫でてやりながら、腰をいっそう強く突き入れた。
「ああぁぁぁぁ・・・・」
まるで拷問を受けているような苦痛に、慶次は気を失いそうになった。いっそうのこと気絶してしまえれば楽なのだろうが、小太郎にぐりりと肉杭を突き入れられるたび、正気を取り戻してしまう。
小太郎と肌を合わせてもいいと思ったことを、今は後悔していた。今でさえこれほどの苦痛を感じているのだから、すべてを入れるのは絶対に無理だろうと思った。だが小太郎が諦めてくれる気にならない以上、どうにもならないのだ。
「小太郎、もう無理だ・・・・止めてくれ」
慶次は懸命に懇願したが、小太郎ももう引き下がれないところまで来ていた。慶次を苦しめることに罪悪感を感じられるような心を持っていたら、理性で欲望を押し殺すことができたかもしれない。だが生憎、小太郎はそのような男ではなかった。慶次の悲鳴を、もっと聴きたいとさえ思ってしまう。
血の匂いを嗅いだ野獣のように、理性ではもう押しとどめられないのだ。
「我を殴り倒してでも抵抗しなければ、我は止めぬ。我の意志では止められぬ・・・」
「小太郎っ・・・!」
小太郎の言葉に衝撃を受けた慶次は、死にものぐるいで抵抗した。拳で何度か小太郎の頬や胸を殴ったが、小太郎はまるで痛みなど感じていないように、笑いながら慶次を見ている。そのうちに、破り捨てられていた野袴で両腕を縛られ、拘束されてしまった。
「小太郎!止めてくれ、解いてくれっ!」
慶次は縛られた腕を振り上げ、小太郎を睨め付けた。全身をつかって身体をねじり、ドタバタと暴れてもみたが、まもなく小太郎に押さえつけられてしまった。結局慶次は、体力を無駄に消費しただけで、小太郎から逃げることはできなかった。
「ククク・・・観念したか、慶次」
はぁはぁと肩で息をしている慶次を面白そうに見て、小太郎は言った。観念したくはなかったが、自力で逃れ出ることはできない以上、諦めるしかなかった。
再び慶次が大人しくなったところを見計らって、小太郎は懐から植物の葉のようなものを取り出した。そして口の中に入れて噛み砕き、それを慶次の肛門と内部に塗り付けた。
「うぬに塗ったのは、鎮痛薬の一種」
一体何を塗ったんだ、と慶次が思っていると、小太郎が言った。
「我の狼が怪我をしたとき、よく使うものだ。害はない」
鎮痛薬を使ってまで交媾したいのか・・・と半ば呆れたが、今の慶次にはありがたかった。小太郎を受け入れるより他にないならば、少しでも苦痛を免れたいというのが正直な気持ちだった。
「あんたのものが、せめて俺の陰茎くらいの大きさだったら、これほど苦労はしなかったと思うんだが・・・」
慶次は、相変わらず隆々とそそり勃っている小太郎のものを見て、ため息を吐いた。
小太郎は声を立てずに笑った。
「うぬが望むなら、うぬの姿に変化して交媾するのも可能だ。それなら、ここもうぬのものと同じになる。我はそれでも構わぬが・・・・」
慶次は咄嗟に、それを想像してゾッとした。自分とそっくりの男と同衾するなんて、絶対に御免だった。
かといって、孫市の姿に変化してもらうというのも嫌な感じがしたし、他にも遠呂智や幸村、兼続、左近の姿を思い浮かべたものの、どれに変化してもらっても、やはり複雑な気持ちになることに変わりなかった。
「小太郎は小太郎の姿がいい」
「我に遠慮しているなら、無用ぞ」
慶次は頭を振った。
「遠慮しているわけじゃねえ。他の誰かの姿になったあんたなんて、俺は嫌だ」
「クク・・・後悔しても知らぬ」
一瞬、小太郎は嬉しそうな顔をし、再度、亀頭を慶次の肛門に触れさせた。そしてそのまま腰を進めたが、薬が効いてきているのか、慶次は苦痛を感じなかった。 だがそれでも、徐々に肉杭の先が肛門を押し拡げている苦しみからは逃れられず、自然に息が荒くなった。
慶次の肛門を何度も攻めているうちに、小太郎の亀頭部分がついに入った。そこの狭さは想像以上で、さすがの小太郎もあまりにも強い締めつけ具合に冷や汗が出てくるほどであった。
「慶次、うぬのここは我を食いちぎりそうだ。・・・もう少し緩められぬか?」
「そんなの、無理に決まっているだろ!」
あまりの勝手な言いように、慶次はついカッとなった。これでもできるかぎり括約筋を緩めているつもりだったし、慶次とて自分の内部を一杯に拡げられているせいで、とても苦しいのだ。
「すまない・・・・声を出さないでくれ。我のものに響く」
激昂したした慶次は尚も抗議の声を上げた。
「何言ってる!あんたがそうやって文句ばかり言うから、俺は・・・」
が、すべてを言い切る前に、小太郎の唇でふさがれた。するりと進入してきた舌が慶次の舌に巻き付いて、強く吸われた。小太郎の押しの強さに似た、強引な接吻だった。
慶次はこういう接吻が嫌いではない。小太郎の唇に食らいつくように貪り、その舌を吸った。
そうしている間にも、接吻のおかげで慶次の肛門が僅かに緩んできた。その隙を狙って、小太郎は腰をさらに突き入れた。己の陰茎が慶次の内壁を押し広げ、粘膜を擦り上げながら少しずつ入って行くのをはっきり感じていた。ぴたりと肉杭の表面に貼りついた粘膜が、ぶるぶると震え、小刻みに陰茎を締めつける感触。それは、何にもたとえられぬほど甘美なものだった。小太郎は、腰が溶けてしまうのではないかと思った。
しかし小太郎とは反対に、太く堅い肉杭を深く突き入れられた慶次は苦しくてたまらなかった。
「ああっ・・・・小太郎っ」
慶次は首を反らせ、たまらず小太郎の接吻から逃れた。まるで腕がそこに進入し、ぐいぐいと内壁を広げでもしているのではないか、と思うようほどの強烈な感覚は予想以上の苦しみを慶次に与えた。
──うぇっ・・・。
胃液が喉もとまで込みあげてきて、食べたものを戻しそうになった。
「・・・・小太郎、お願いだ。それ以上、入れられたら・・・・俺、死んじまう」
慶次は涙で滲んだ目で小太郎を見て、懇願するように言った。
いくら小太郎のものが巨大だからと言って死ぬはずない、と頭では思うのだが、感覚の上では、死にそうなほど辛かった。これであの激痛まで加わっていたら、と思うと背筋が寒くなった。もし小太郎が鎮痛薬を塗ってくれていなかったなら、今頃、間違いなく気を失っていただろう。
言われるまでもなく、小太郎もこれ以上入れるのは無理だと悟っていた。
慶次は血の気を失ったように、青ざめた顔をしていたし、小太郎も手のひらでギュッと強く陰茎を握られているような感覚に、これ以上耐えていられないと思っていた。
「我はこれ以上、奥へは入れぬ・・・」
小太郎も荒く息を吐きながら言った。そうしている間にも、慶次が呼吸するのに合わせて、慶次の内壁と肛門が己のものを締めつけているのを感じていた。甘く、切ない、泣き出してしまいそうになるほどの快感。初めて同衾した小太郎には強すぎる刺激で、身体が打ち震えてくる。
「だが、我は・・・・」
そう絞り出すように言ったかと思うと、小太郎は我慢出来ないというように首を振り、慶次の腰を両手で強く掴んで、荒々しく腰を動かし始めた。
「ひっ・・・」
仰け反った慶次の喉の奥から、悲鳴が洩れたが、小太郎は止められなかった。 餓えた狼が久しぶりにありついた獲物を貪り喰らうように、腰を乱暴に挿抽し、慶次の肉体を味わった。
容赦ない小太郎の挿抽に抵抗できたのは途中までで、慶次は尋常ではない苦しみに耐えかね、何度も気絶しては目を覚ます、といったことを繰り返した。
そして何度目かの喪心で意識を失っていたとき、ふいに布のようなもので顔を拭われて、ハッと目を覚ました。汗と涙、唇から流れた唾液で、自分でも知らぬうちに顔中を濡らしていたのだった。
「・・・すまぬ、慶次」
小太郎らしくもない優しい言葉をかけられて、慶次はふっと自分の身体の緊張が解けるのが分かった。小太郎のものがいまだ中に入ったままであることはすぐに分かったが、不思議と以前までの苦しさは感じなくなっていた。さすがに少しは身体が慣れたのだろう、と思った。
「小太郎、何度か気をやったのかい?」
優しくいたわるように頬をさすってくる小太郎を見上げ、慶次は言った。
狂気じみた目で己の身体を貪っていた小太郎が、今はとても穏やかな顔をしていることに気づいたからだ。拘束されていたはずの腕も、いつの間にか解かれている。
「三度、達した・・・うぬの中は得も言われぬほど心地よく、熱く・・・まるで溶けるようだな」
ため息混じりに言った小太郎は、愛おしそうに慶次の頬を撫でて、頬に貼りついていた髪を優しく払った。その優しい仕草に、慶次は思わず微笑んだ。
「うぬをこれほど愛しいと思うとは・・・思いもよらぬことであった」
夢でも見ているような表情でうっとりと言い、小太郎は再びゆっくりと腰を動かし始めた。
「ああっ・・・小太郎、小太郎っ」
甘い声を上げた慶次は、小太郎の背に腕を回し、その厚い胸に縋っていた。
肉を受け入れることに身体が慣れたのか、はたまた優しく小太郎が挿抽しているからか、思いもかけず、慶次は快感を感じるようになっていた。少し前まであれほど己を苦しめた太く堅い肉杭は、ありえないほどの質量で慶次の中を満たし、なんとも言えぬ幸福感を与えていた。それは今まで体験したことのない感覚で、小太郎のような陰茎を持った男だからこそ与えられる、狂おしいほどの快感だった。